● 薪のミニ知識
● 薪とは
薪とは、以下のように定義されています「燃料にする木。雑木を適時の大きさに切り割って乾燥させたもの。たきぎ。わりき(広辞苑)」。
主に「束」の単位で売られており、販売される際に既に適度な大きさ(直径22.5cm、長さ36cmまたは45cm)にそろえて割られています。薪一束の規格は、(社)全国燃料協会の自主規格が一般化していますが、地域ごとに若干異なっています。
木を薪として割っておくのは、ストーブの火室に入る大きさにするというだけではなく、割って薪にして木肌を多く出すことで乾燥を促進するというのも大きな理由のひとつです。
● 薪の種類
一般にナラやクヌギなどの広葉樹、いわゆるドングリ系の木が火持ちが良く熱量も十分なため最適とされています。ただし、スギやヒノキなどの針葉樹も薪に割って十分に乾燥させることで、燃焼による不純物の発生を抑えられ、使用できます。
薪ストーブの燃料としては、以下の条件をクリアしたが適しています。乾燥によりその性能を十分に発揮させることが大切です。
● 薪の使用量(平均的な例)
2〜3束/1日 →60〜90束/ひと月 →240〜360束/1シーズン
● 薪の効用
二酸化炭素の削減
CO2は、C(炭素)にO(酸素)がくっついてできる分子です。「炭素」は、生き物を形作る元の元であり、炭素が結びついて、私たち生き物が形作られています。木は葉の部分からCO2を吸収しては、炭素を結び付けて幹や枝葉をせっせとつくり成長していきます。また生き物を燃やせば、炭素は再び空気とくっつき、CO2として大気中に放出されます。
今、大気中のCO2が増えて地球温暖化が騒がれている主な原因は、化石燃料(石油や石炭、天然ガスなど)を燃やすことで、地中深くに閉じ込められていた炭素が大気中に放出されていることにあります。
もちろん木を燃やしてもCO2が発生しますが、違いは炭素がもう一度木に戻ることができることです。
つまり家で薪を燃やしても、森では新しい木が生長してCO2を吸収しているため、大気中のCO2は増えません。
一方で化石燃料は、その名のとおり、生き物が化石になってできる燃料で、できるまでに長い年月が必要になります。つまり化石燃料の代わりに、薪を使うことで、地球温暖化の防止につながるのです。
森林の活性化
森が成長していくと、最終的に最も有利な木が生き残り、森の成長が止まっていきます。すると木が炭素を吸収する量が減り、木が呼吸して放出するCO2の量の方が多くなります。つまり、木が若くて成長が盛んなうちに木を切っては使っていったほうが、有効に資源を利用できるのです。
もちろん木をどんどん切れば、大気中のCO2が増えて大地は禿山になってしまいますが、幸い日本は森が育つのに適した、恵まれた国です。特に薪に適しているドングリ系の木は、切っても株から芽が出てきやすいため、ご先祖様たちは、数十年単位で木を切っては使いながら生活してきました。
現在日本では、燃料のために木が切られなくなったことで、齢をとった木に虫が入り枯れる病気が急速に広がっています。まだまだ余っている日本の森の木を薪として有効に使うことは、CO2の削減に貢献するだけでなく、森を元気にすることにもつながります。
● 薪の入手法
薪ストーブを利用すると、安定した薪を確保することが必要になります。薪の入手方法は色々あります。商品として完成された薪を購入するのではなく、部分的に自分で手をかけたり、薪の材種を変えるなど工夫次第で様々な入手が可能です。
● 入手の状態
どのような状態で手に入れるか、自分でどこまでできるかを考えて入手しましょう。
薪 | 燃料の薪として生産された商品。すでに適度な太さと長さにそろえて割られており、通常はナラやクヌギ、サクラなどが流通している。 |
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玉切り材 | 建築や園芸、土木材料など様々な用途を目的として、原木がある程度の長さに玉切りされた材。30〜40cmになったものであれば、あとは薪割りするだけ。 |
原木 | 山から切り出された丸太。人の手がかけられていないので価格は安い。チェーンソーで玉切りした後薪にする。 |
● 入手先
薪や原木を手に入れる場所を、探してみましょう。
薪商品 | 燃料店、ホームセンター、DIYショップ、薪ストーブショップ |
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材木 | 工務店、建築現場、材木店、製材所 |
原木 | 林業家、果樹園農家、森林組合 |
● 薪をつくる
● 薪割り
薪割りは、上手に割れれば気持ちよく、ストレス解消、適度な運動になります。コツをつかんで楽しんで行いましょう。
必要な道具
斧、クサビ、チェーンソー、トング、グローブ、ブーツ、台座、ノコギリなど
割る前のポイント
・ 場所
動きやすい服装で十分な広さを確保し、地面に斧が当たることもあるため土などの柔らかい場所で行う。
・ 時期
冬採りの乾燥した木を用いるため、薪割りは冬から春に行うことになる。木の細胞内に水分の少ない冬採りの木を用いたほうがよい。
手順
(1) 薪を置く台座は、薪を割る時に斧が水平くらいに
なる高さにする。(図1)
台座のやや奥側に薪を置き、足を肩幅に開き、利
き手を奥に、もう一方の手を柄尻に構える。
(2) 真っすぐ上に振りかぶる。
(3) スピードをつけて真っすぐに振りおろす。
このとき、奥側の利き手を柄尻の方へスライドさせ
て遠心力が大きくなるようにすると、少ない力でも
割ることができる。(図2)
● 近隣の薪入手先
名称 | 薪の種類 | 販売形態 | 連絡先 |
---|---|---|---|
北はりま 森林組合 | 広葉樹薪:400円/束 原木(雑木、2〜4m長1トン): 7,350〜10,500円 |
店頭渡し/ 配達 |
兵庫県多可郡多可町加美区豊部1922−4 0795−35−1177 |
仲しい茸園 | ナラ・クヌギ薪:350円/束 原木:応相談 |
店頭渡し/ 配達(地域は応相談) |
兵庫県川辺郡猪名川町木間生字大道下16 072-768-0055(携帯:090-3466-6593) |
薪クラブ (石谷林業) | ナラ、カシ、サクラ、ケヤキ、シラカバの薪箱詰め(36cm長・約20kg):1,575円〜 | 店頭渡し(鳥取県)/ 配達 |
大阪市西区千代崎2−19−4 0120−414−724 |
● 薪のストック法
● 薪の材積
薪は一般に束という単位の上に棚でも数えられます。1棚=1.5m×1.5mの棚で36cmの薪(約50束分)というのが一般的です。薪をストックする薪小屋はこの棚単位で大きさを決めて建てると良いでしょう。
一棚の薪はどのくらいの体積になるかは、薪と薪の隙間にもよりますが、統計上ではこの空隙率を37.5%と設定しています。
・一棚の見かけの材積=2尺×5尺×10尺=2.7立米
・一棚の薪の実際の材積=2.7立米×(1−0.375〈空隙率〉)=1.69立米
一般に1シーズンに使用する量である240〜360束は、5〜7棚に相当します。2年分くらいストックしておくと安心です。
● 薪の積み方
薪の乾燥の度合いは薪の発熱量を決定づけます。きちんと積んで、焦らずゆっくりと夏をまたいで半年以上乾燥させることが大切です。一般的には握りこぶしが入らない程度の隙間を空けて積めるのがよいとされています。
一般的な積み方
1. 水はけの良い、できれば平らな場所に敷き木を3、4本敷く
2. 敷き木の上に崩れないように積んでいく
積んだ薪が崩れないように端は井桁に積むか、しっかりした杭や壁などで支える
3. 全てを短く切らずに、長さ60〜90cmの半割りを数十本作っておくと、高く積む際などで安定させるための「繋ぎ」として入れるのに便利
4. 杭と杭の間や両端を井桁に積んだ間に樹皮が下になるように、適当な隙間を空けて空けて積む
スウェーデンやスイスの円形積み
不定形な薪などを真ん中にいれてしまうので、場所さえあれば効率的な積み方です。
1. 日当たり、水はけの良い地面に棒を格子状に置く
2. 薪を棒の上にゆるめに積んでいく
3. 大きめの薪で周りの壁を作るように積んでいき、小さめの薪や不定形の薪はその中央にばらして置く
4. 薪の高さが十分になったら、最初に中央から積み上げ、平面になるように周囲に広げていく
具体的な場所
・ 日当たりと風通しの良い、雨がかからない場所(ただし、防火上の観点や薪につく虫の近隣への迷惑を考慮し、道路際や隣地境界に近い場所は避けたほうがよい)
・ 理想は薪小屋、軒下、テラス下、基礎下。雨がかかる場合には、薪の上に、トタンやブルーシートなどを乗せておきましょう
・ 自動車でのアプローチがしやすく、かつ室内への薪の移動が楽な場所(車で搬入してすぐに積めるため、都会では車庫の隙間に簡易の薪棚を設けるケースが多い)
注意点
・土の地面には接しないように、スノコや枕木を設ける
・軒下などで家の壁際に置く場合、壁との間に隙間を設ける
・積み上げるときは束のままよりも井桁状にして積み上げると、薪の間の風通しが良い
(ただし、井桁状に積むとかさが増えるのでスペースが必要)
・薪割り後、すぐに薪を小屋に保管すると虫が発生してしまうケースがある
・シロアリの被害が心配な地域では、住居の軒下に長期間積んでおくのは避ける
● 薪を使う
薪には、暖炉、囲炉裏、バーベキュー、おくどさん、薪ボイラー、薪ストーブなど、様々な使い方があります。
● 薪ストーブの種類
一口に薪ストーブといってもその種類は、形状・大きさ・価格まで多様です。また、デ
ザインもシンプルなものから凝ったものまで色々あります。価格帯から、機能や性能を比較してみましょう。
10万円以下
日本製の時計型ストーブ、ダルマ・ストーブ、日本製や中国・台湾などの鋳鉄製ストーブなどがあります。比較的小さいので隠れ家や離れなどでの使用に向いています。アンティークな雰囲気のものや、安くて性能的にも非常に優れたものがありますが、中には耐久性のないもの、細部の作りの粗いものもあります。
10万〜20万円台
アンティークタイプや小型のシガータイプなどがあります。20万円台になると凝ったデザインのものも出てきます。探せば普通の家のリビングなら十分暖められるサイズも見つかります。輻射式・暖房式の小型〜中型ストーブ、対流式の小型ストーブが中心になります。
30万〜40万円台
鋳鉄製や鋼板製など、様々な種類があり、また機能的にも充実しています。吹き抜けのある家なら家の中心に置いて家全体を暖めることも可能です。機能的にも素材的にも様々な種類が揃ってくるため、一番売れ筋の薪ストーブが揃う価格帯です。中でも、中型の輻射式ストーブ、または対流式と輻射式を兼ね備えた複合式ストーブが主です。
50万円以上
セラミック・タイルや自然石をあしらった鋼板製のものなど素材は様々です。また、アーチ型、円柱型など形状も様々あります。中にはオーブンや薪入れが内蔵されたタイプもあり、対流式で電動ファンなどが付いたものなど、構造や機能
も複雑になってきます。
100万円以上
壁などにはめこむビルトイン・タイプのものです。施工費用を含めるとさらに費用がかかります。はめこむストーブの本体だけであれば、大きさや前面のデザイン、電動ファンや吸気口の有無などによって値段に幅があります。
● 薪ストーブQ&A
● どんな家につけられますか
戸建住宅であればほぼどのような家でも設置することができますが、集合住宅の場合には管理人との話し合いが必要になります。設置方法については、基本的に専門家の判断に頼ることになりますが、法律面では実際のところ制限はほとんどなく、建築基準法、消防法にしても薪ストーブもしくは暖炉に関する記述はごくわずかにある程度です。
薪ストーブを正しく設置し、乾燥した薪を使用すればほぼ煙は出ませんが、多少の臭いは発生しますし、風向きによっては近所で気になる人が出てくるかもしれません。都心で設置を希望する場合には、近所との有効な関係を築いておくことも大切です。
薪ストーブ業者などが集まって作っている「日本暖炉・ストーブ協会」では、薪ストーブの安全性を高めるために「暖炉・ストーブ設置工事安全基準ガイド」を作成しています。これはアメリカ合衆国の薪ストーブに関する安全基準「NPPA211」をベースにして、日本の事情に合わせて作成したものです。このような協会に加盟している業者を選ぶのも一つです。
● 何の費用がどれくらい必要ですか
初期費用は、ストーブ本体、煙突、薪等の必需品を購入する費用の他に、煙突の取り付け工事、炉台の設置費用がかかります。また場合によっては、床下の補強工事なども必要となります。
維持費としては、薪にかかる費用はもちろん、煙突の掃除を依頼した場合の料金などが必要になります。
初期費用 | 維持費用(年間) |
---|---|
薪ストーブ代 30万円 設置工事費 20万円 煙突代 30万円 炉台代 15万円 ================= 合計 95万円 |
薪代 0〜15万円 (300束、500円/束) 煙突掃除 0〜3万円 ================= 合計 0〜18万円 |
● どれくらいの家庭が現在薪ストーブを導入して いますか
高価なものから安価なものまで含めると、年間約12,000台の薪ストーブが販売されていると言われています。冬季に常時稼動しているものや別荘地にあるものまでその使用頻度は様々です。
● どんな危険性がありますか
主な危険は火災です。中でも薪ストーブの火災は、煙道火災と低温炭化によるものがほとんどです。煙道火災とは、煙突内部のタールや煤に火がつき、燃えることです。また低温度炭化火災とは、煙突部分の工事の際に精度のよくないものを使っていると、薪ストーブを長く使ううちに壁の内側などの家屋の木材を低温炭化させることです。
<予防法>
・煙道火災
煙突掃除をまめにすることでかなり防げます。煙突の構造をあらかじめ掃除がしやすいようにしておき、タールや煤の出にくいような、乾いた薪を使うことが大切です。また一般的には、針葉樹よりも広葉樹を使用したほうが、タールの発生を防ぐことができます。
・低温炭化火災
最初の施工がよければ起こらないため、きちんとした施工が大切になります。信頼できる専門の薪ストーブ店に施工してもらいましょう。
● 薪のある暮らしお役立ち情報
● 書籍
タイトル | 著者・編者 | 出版社名 |
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薪割り礼賛 | 深澤 光 | 創森社 |
薪割り紀行 | 深澤 光 | 創森社 |
焚き火大全 | 中川 重年・吉長 成恭・関根 秀樹 | 創森社 |
北摂里山散策ガイドブック | ぶんぶん | |
火と炭の絵本 | 杉浦 銀治 | 農文協 |
薪ストーブがわかる本 | 地球丸 | |
薪ストーブ大全 | 地球丸 | |
灰の神秘 | 岸本 定吉 | DHC |
薪ストーブ入門 | 山と渓谷社 | |
薪ストーブの本 | W・ブッシャ・S・モリス バーモント・キャスティンクス ステファン モリス |
昌文社出版 |
● 雑誌
タイトル | 特集 | 出版社名 |
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チルチンびと 15号 | 復活する囲炉裏 | 風土社 |
チルチンびと 41号 | 火を囲む暮らし | 風土社 |
チルチンびと 46号 | ほっこりあたたか 火のある暮らし | 風土社 |
チルチンびと 52号 | 家族のまんなか、火のある暮らし | 風土社 |
暖炉・薪ストーブを楽しむ | ニューハウス出版 | |
薪ストーブライフ1 | 薪ストーブがほしい人への8つのアドバイス | 沐日社 |
薪ストーブライフ1 | 薪ストーブがほしい人への8つのアドバイス | 沐日社 |
薪ストーブライフ2 | 本格シーズン前の薪ストーブ | 沐日社 |
薪ストーブライフ3 | 燃料としての「薪」雑学 | 沐日社 |
薪ストーブライフ4 | 薪作りライフ 基本編 | 沐日社 |
薪ストーブライフ5 | 事例別 薪棚づくり | 沐日社 |