その他
森林バイオマス利用を考える交流会 概要とアンケート結果
- 日時
- 平成15年2月2日 (日) 午後1時〜5時
- 場所
- 京エコロジーセンター1階 シアター室
(京都市伏見区深草池ノ内町13)
(所在地,交通手段)
- 参加費
- 主催/共催団体会員: 300円,一般参加者: 500円
- 参加者
- 約70名
- 内容
-
- 講演「岩手県における森林バイオマスの利用と地域振興政策」阿部健氏(岩手県大船渡地方振興局長)
- 討論・意見交換
- ペレットストーブ・薪ストーブの実演
- 府内で活動する各団体からの報告
- 主催
- 薪く炭くKYOTO
- 共催
- 京のアジェンダ21フォーラム、 気候ネットワーク、 きょうとグリーンファンド、 地球デザインスクール、 森林再生支援センター
- 後援
- 京都府、 京都市 京エコロジーセンター、
※緑と水の森林基金の助成を受けて実施しました。
概要報告(にゅーす3号より)
去る2月2日に京エコロジーセンターにて、森林バイオマス利用を考える交流会が開催されました。森林(木質)バイオマスの最新情報の共有、市民参加や導入推進政策の議論を目的として、企画されました。13時の開始当初から70名を越える多数の参加者により、会場は埋め尽くされました。
前半の第一部は、阿部健さん(岩手県大船渡地方振興局長)より「岩手県における森林バイオマスの利用と地域振興政策」という演題にてご講演いただき、後半の第二部は、京都府内で活動する各団体からの報告と運動促進のために熱心なやりとりが行われました。また、会場では同時にペレットストーブ・薪ストーブの実演も行われ、数々の森林バイオマスファンの興味を誘い、当会始まって以来の大きな企画は、概ね成功を収めました。
第一部 阿部 健さん 講演「岩手県における森林バイオマスの利用と地域振興政策」
南北に北上山系が連なり、東は三陸リアス式海岸に囲まれ、四国とほぼ同じ広さをもつ岩手県は、農林水産業が盛んです。県の林野率は77%で森林が多く、素材生産が約121万m3あります。
熱心な知事のリーダーシップのもとで『がんばらない宣言』にみられるような、既存の価値観とは違う岩手独自の人間的な価値観の創出・転換により、地域を活性化していくことに取り組んでいます。
環境首都に向けての計画の中で、自然エネルギーを地域の価値として作っていこう、大規模発電はよりもその地域にあったエネルギーを自分たちで作っていこう、小規模の発電熱供給をやっていこうという方向に考え方がまとまりました。例えば、風力発電は特にここ1、2年は活発で、東北一の風力発電設備が整っています。今でこそ火力発電が20%を占めていますが、ついこの間まで、水力、地熱などで100%自然エネルギーによる電力を県内では生産していました。
そのような背景のもと、森林(木質)バイオマスの取り組みと知事の目指す方向性やリーダーシップとが合致し、林業振興を目的として、約3年前から課長クラス以上がメンバーとなった木質バイオマス利用のための研究会が開かれました。林業振興を目指した研究会では、海外のスウェーデン・ベクショーに視察へ行って情報収集に努め、昨年度は、生産量18万m3の間伐材(半分は林地残材に)を木質バイオマスとして利用できないかと検討し、売電を含みその見積もりを行ないました。
実際の取り組み事例は、オイルショックのころ石油価格の値上がりによりできた葛巻林業のペレット工場が挙げられます。そのころ30箇所はできたと言われるペレット工場の中で、数少ない現在も継続して稼働している工場です。そこでできたペレットは、温水プールでの燃料として多く安定して利用される以外にもペットの寝床やトイレとしても販売利用されています。また、上流の林業による素材生産から、下流の住宅などの利用まで一貫した取り組みがみられる住田町では、ペレット工場が新たに建設される予定です。県の研究機関の関わりのもと南部鉄を模した国産ペレットストーブを開発し、発売間近という段階なっています。
このような活動は、強いリーダーシップが先進的な取り組みを進め、行政的な縦割り作業の弊害を少なくさせた結果だと考えられます。一方、今後は、ユーザーを広げていくためにも一般市民や企業の方に広く参画してもらえるような活動にしていかなればならないとの課題もあります。
終始丁寧で非常にわかりやすい阿部さんのお話は、満場の拍手で終わり、熱心な質問がありました。アンケートでも多くの方が大変満足されており、今後は、実際に岩手を訪れるツアーの計画などの話が持ちあがっています。
第ニ部 「京都府内の各団体報告と議論」
第二部の『活動報告&意見交換』では、参加8団体の方に、各団体がどのようなスタンスで木質バイオマス関係の活動や取り組みをされているのかを報告していただきました。発表者は、以下になっています。
- 笹谷さん(京のアジェンダ21フォーラム)
- 田浦さん(NPO法人気候ネットワーク)
- 桜井さん(地球デザインスクール)
- 大西さん(NPO法人きょうとグリーンファンド)
- 野間さん(NPO法人森林再生支援センター)
- 大江さん、竹内さん(風のがっこう京都)
- 豊田さん(京エコロジーセンター)
- 石丸(薪く炭くKYOTO)
ボランティアによって間伐し、高槻のペレット工場で木質ペレット化し、燃料として利用することによって地域の経済活性化につなげようという取り組み(京のアジェンダ)、風力、太陽光などの自然エネルギーについて学ぶ講座「自然エネルギー学校・京都」での温暖化防止からのアプローチ(気候ネットワーク)、ペレットストーブやボイラーの導入や実験、オンライン上の研究会『京都木質バイオマス研究会』、地球デザインスクール流自然エネルギービジョン等木質バイオマスをキーワードに本来豊かな日本の森と農山村の再生のあり方を考えるための様々な取り組み(地球デザインスクール)、「おひさま発電所」の広がり、「グリーン電力」の仕組み、主婦・女性の感覚を生かした活動のお話(きょうとグリーンファンド)、地域に暮らす人々の視点と専門家としての視点の一致を図り、この立場から自然環境、住まう場としての社会環境を考えるというスタンスのお話(森林再生支援センター)、森から各家庭消費までの過程で「雇用」を目指す取り組み(風のがっこう京都)、施設を生かし、木質バイオマス関連の活動を含む様々な市民活動の支援やネットワーキング、情報提供をしていくための取り組み(京エコロジーセンター)、「京都」を舞台に薪割り、炭焼きなどの実践活動、勉強会等の普及活動、資源量調査等の研究活動を同時に進めることで森林バイオマスの利用促進と普及啓発を目指すこと(薪く炭くKYOTO)など、京都近辺におけるそれぞれの団体の多岐に渡る目標、活動内容の報告がありました。また、飛び入りでUFJ総合研究所の楢崎さんから、高知でこれから取り組むバイオマス関係事業の発表がありました。
報告後の意見交換では、会場から滋賀県で市民活動をされている方や行政の方などから質問がありました。また、最後に各団体がどのような点で協力しあえるか、市民をまき込むためには何が必要かということについて話しあわれ、今後もこのような交流会、情報交換を積極的に進めていくことが望ましいという確認がされました。
薪く炭くKYOTO 森林バイオマス利用を考える交流会 アンケート結果
【アンケート全回答者 34名】
- 性別
- 男−30人 女−3人 不明−1人
- 年代
- 20代−8人 30代−7人 40代−10人 50代−4人 60代−4人 その他−1人
- 交流会を知った方法(複数回答)
- 知人−9人 メール−9人 新聞−6人 チラシ−2人 所属団体より−11人 その他−2人
- 講演について
- 大変良かった−12人 良かった−17人 ふつう−3人 良くなかった−1人 不明−1人
- ペレットストーブ・薪ストーブの実演
- 大変良かった−6人 良かった−14人 ふつう−12人 良くなかった−0人 不明−2人
- 府内で活動する各団体からの報告
- 大変良かった−6人 良かった−18人 ふつう−5人 良くなかった−1人 不明−4人
森林バイオマスの利用拡大には何が必要だと思いますか?
- 市民の関心を高めること
- 市民を変える普及・教育。安い木質燃料の供給、体制、システムの構築
- 一般の人々の必要性への理解。森林バイオマス、環境問題だけにとどまらずもっと社会構造から総合的に切り込めるネットワークづくりが必要。その上で環境問題がバイオマスがどう必要なのか見ていくことが肝要。
- 一般市民への理解を深めること。まだまだ好きな人々が勝手なことを言っているだけのように思われているのでは。
- エアコン並の公共放送によるアピール(コマーシャル)
- 森林資源の価格の安定化。そのうえで森林保全の人件費の確保。また資源の利用策の工夫(需要、製材・端材の市場拡大)そして消費者の意識改革(長期間利用、再利用資材としての再評価、脱プラスチック生活)が重要です。
- お金
- 収支バランス。経営の確立。
- 行政の利用する方への経済的支援
- 経済性(安いこと)需要はあります。高価なだけなんです。個人としてそう思います。
- 搬出コストの画期的な低減。現状の電気機器がそのまま使えるようなエネルギー利用すなわち電気エネルギーの取り出し。
- 日本の森林を生すにはどうするか。特に伐出についてもっと取り組むことが必要では。
- 需要+行政の支援(石油燃料への転換など) 利用機器の確立(安くて使いやすい機器)
- やはり税制の優遇。林業従事者の適切な環境。
- ペレットストーブなど一般家庭へ普及するような方策が必要ではないか。今回実演のあったストーブや岩手で開発されたストーブは、まだまだ一般家庭で使用するのは難しそうで、石油ファンヒーターのようにホームセンターで安価で販売されるようなものを開発すべきではないだろうか。また補助金、税金等の政策も必要と思う。
- 税制上の優遇。大型施設、公共施設でのバイオマスエネルギー利用の義務化。間伐ボランティアよりも搬出に特化したボランティア活動の活性化を促進。
- 化石燃料に対する環境税を設定する。バイオマスより高くなるように化石燃料を設定する(スウェーデンに学ぶ)
- 国の対米従属に基づいた米石油資本の利益最優先のエネルギー政策の根本的転換。住宅構造を木質バイオマス利用可能にするよう促進。設置、ランニングコストを削減すること。
- 総合エネルギーの魅力の創造が必要。日本の生活は夏(梅雨)を中心に構築されてきた今回の発言には、そこに言及するものがなかった。このままでは燃料電池に淘汰されてしまうのではないか。
- 広い心。理解
- リーダー、市民の理解、楽しさ
- 行政側の強いリーダーシップ
- 地域住民の協力大切である。
- スローライフな生き方が社会の主流になっていくこと
- ロジスティック
- 10年〜20年先までの長期ビジョン
- 風上(川上)と風下(川下)の確立
感想やご意見を自由にお書きください。
- いろいろな方面からの報告でとても勉強になりました。僕も普及の一役を担うことができたらなと思います。
- 環境に関わる人々や人間関係が引き続き交歓しあう活動の積み上げが大切だとあらためて痛感した。
- すごくたくさんの団体の方々の話が聞け、たいへん勉強になった。
- 皆さま、お疲れさまでした。京都の中にこんなにいろいろな団体があると知れて良かったです。おばちゃんや女性に広まる用に身近なことからアプローチということが心に残りました。
- 少しづつ具体化を期待しています
- これからが楽しみです。
- 技術的なこと、使用した時のこと、身近なお話も聞きたかったです。
- 総合的知見の発言を頂きたい。
- 各団体、発表5分は短いですね。
- 今日はペレット、木くずに主題を置いた話になり、アルコール抽出、燃料電池の話ができなかったのは少し残念であった。
- エネルギーと他の需要との複合視点を
- 温暖化防止より自然環境保全、水保全の観点から地域ビジネスも成り立つ。環境共生モデルを築くことができるのか。このバイオマス利用ではないかと思いました。
- 竹林の拡大防止策として竹林バイオマスの有効利用について模索中です。
- バイオマスについては大賛成。しかしペレットストーブや薪ストーブなどの一般家庭への普及については自分の中で納得できない部分がある。欧米では良いかもしれないが、日本のような地震のある国では建物の中で火を使わない方向で技術が進歩している気がする。
- 阪神・淡路大震災でもあったが、耐震構造のないストーブではまだまだのような気もする。また煙について街中では少し疑問がある。ただ、電気・ガス・ガソリン等の代わりにバイオマスを使うことが大切だと思う。
- 200年先を見てバイオマスを主体にしなければやっていけないことを皆が自覚できるようPRしていきたい。化石燃料はほんの一時的なもの。エネルギーの塊。我々の世代で使ってしまって良いのか。自動車社会の見直し。自動車が人を運ぶエネルギー効率はたったの1%