この団体は2013年3月末をもって解散いたしました。

       

既に木質エネルギーの利用が進んでいる欧米や、国内で広まっている新たな取組をご紹介します。【文・写真撮影:神崎康一、編集:成田真澄】

  1. オーストリア・シェンケンフェルデン村の地域暖房
  2. 滋賀県高島市新旭町の熱供給

1. オーストリア・シェンケンフェルデン村の地域暖房

シェンケンフェルデン村 中心部
(写真:シェンケンフェルデン村 中心部)

家屋数480軒、人口約1400人のシェンケンフェルデン村は、チェコとの国境に接する高地に位置します。広い森林があり、また常時強い風が吹いているため、木質バイオマスと風力発電の利用には絶好の場所です。
ここでは、一箇所で集中して木質チップを燃焼させて各戸へ熱を供給する、地域暖房が行われています。

地域暖房装置

村には豊かな木材産業があり、また熱を供給するのに都合が良いことに、村の中心部に家屋が密集していたため、このプロジェクトが始まりました。
1997年に農林業を営む34人の有志が集まり、村へ暖房装置を設置するための協同組合を立ち上げました。

設計段階では、特に経済性と環境問題に十分な注意が払われました。
ひとつには、技術的な構造と、熱生産センターおよび各戸へ熱を供給する配送ネットワークの規模です。そしてもうひとつは、木質チップの貯蔵と運搬を低コスト化するための移動床式貯蔵庫の建設でした。

熱生産センターは、市街区域の西南端に建設され、3500m3のチップを収容できる木質チップ貯蔵庫、ボイラー庫、電子機器室、操作室、各種衛生施設を備えた管理棟が造られました。
また、各戸のエネルギー使用状況や機器設定は、熱生産センターでまとめて監視、操作管理できるデータネットワークが整えられました。


熱生産センター 近隣暖房(NAHWAERME)  外観 熱生産センター 近隣暖房(NAHWAERME)  入口
熱生産センター 近隣暖房(NAHWAERME)

木質チップボイラーMAWERA社製
木質チップボイラーMAWERA社製
右が熱出力1150kW、左が熱出力850kW
冬季には両方稼動するが、夏季には給湯だけの場合もあり1基だけ稼動する。

概要(2004年3月時点)

発熱能力 2000kW
ネットワーク長 1500m
加入家屋件数 45
加入家屋の使用量 1200kW
用途 暖房および温水利用
操業開始 1998年11月28日
全体計画・管理 ナーヴェルメ協同組合、シェンケンフェルデン村
建設費 約21百万オーストリーシリング(¥10=1シリング)
財政支援 EU、オーバーエステルライヒ州、その他

移動床−最新技術の導入

この辺りでは初めて、熱発生装置に移動床式貯蔵庫という最新の技術が装備されました。木質チップ貯蔵庫の移動床は面積500uあり、貯蔵された木質チップは水圧装置によって少しずつ燃焼室の方向へ全体が押されていくようになっています。

木質チップ貯蔵庫 面積500m2
木質チップ貯蔵庫 面積500m2

細やかな工夫と長所

木質チップはトラックの荷下ろし場から直接貯蔵所の中に投入されるので、搬入コストがかからない工夫がしてあります。また建物内に運搬装置がないため、内部面積を最大限有効に使うことができ、トラクタや荷扱いリフトなどの運搬機械を必要とせず、排気ガスなどが出ません。
荷下ろし場から燃焼室まで木質チップが移動していくまでには数ヶ月かかるため、その間に木質チップが乾燥し、燃焼効率がよくなります。貯蔵場の隅でもチップが残らないほか、貯蔵所には人がいらないため、糸状菌やダニ類等の塵埃による健康被害が出ません。完全自動運転できることから、運転コストも最小に抑えることができます(荷下ろし場から燃焼室まで100m3のチップを運ぶ費用は約10シリング)。

地域暖房協同組合の目標

組合では、地域の生産物を地元に残し、残廃材に価値をつけることを目指しました。また自分たちでエネルギーを作り出すことで、外国からのエネルギー輸入に頼らない生活を目標にしています。地域の安全や環境へも配慮し、煙は出しません。
このシステムにより、年間約210,000リットルの暖房用オイルを節約し、年間約500トンのCO2削減が可能となりました。

達成されたエネルギー効率

村の養護施設の人たちが作った陶板

加入家屋には、村の養護施設の人たちが作った陶板が掲げられます。 各家には、操作盤と、センターから常時遠隔操作・検針ができる通信装置も装備されています。 接続の際には、専門員が来て暖房装置の設定をするため、従来に較べて最高30%のエネルギー節約が可能になりました。また、各戸各部屋別の温度管理をセンターに任せることができ、住民の手を全く煩わすことがなく、老人、障害者などの住まいとしても快適なものになっています。

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2. 滋賀県高島市新旭町の熱供給

滋賀県高島市新旭町の熱供給施設は、日本の木質燃料熱供給施設の中でも珍しく、熱を販売して収入を得ている先進的な取組です。

熱供給施設


2005年に完成したこの施設は、周辺の2つの民間施設に熱を供給して熱の販売収入を得ているのが特徴です。今後供給先を拡大していくことによって、黒字経営が期待されています。

施設概要



名称 高島市熱供給施設
事業主体 高島市
建築面積 169.15u
総事業費 217,000千円(平成15年度 木質バイオマスエネルギー利用促進事業)

プラント機器仕様

温水送りボンプ
温水送りボンプ

チップボイラーは、温水は85℃で消火し、71℃で着火する、オンオフ制御がされています。
原料となる木質チップは、専門のチップ会社から供給されており、供給量は年300トン(含水率平均 30%)です。チップの大きさは10〜20o、素材は生木に限られており、樹皮などは含んでも構いませんが、土石や有害物質などの不純物を含んではいけません。
運ばれてきたチップは、噴射水で洗浄し、ハンマーミルで粉砕後、選別機で選別されます。

温水送りボンプ
熱供給施設外観
左室:チップ溜め
右室:チップ自動送り装置

熱供給施設の消費電力は、平均して9000 kWh/月で、電気料金は約160万円/年にもなります。
作った熱の供給施設への販売基本料金は12万円/月で、従量料金は8.3円/kWhです。これにより熱販売収入が約600万円/年になります。施設の減価償却のために基本料金が大変高く設定されている点が、今後の顧客拡大の課題です。
現在の収入は必要費用の約半分ですが、施設能力は現在の約2倍以上あるため、供給先を増やして収支バランスをとっていくことが期待されます。

チップボイラー出力 523kW
温水ボイラー1(灯油) 581kW
温水ボイラー2(灯油) 465kW
温水供給温度 送り 80℃
返り 70℃

 

チップボイラー(タカハシキカン製) 2週間分の灰の量
ハンマーミル 選別機 粗大、中間、ダストを
篩い分ける

供給先は、平成19年12月現在で、新設のNPOいきいき元気館と社会福祉法人と、新旭みのり会の経営する特別養護老人ホームの2施設です。

いきいき元気館は、熱供給施設に隣接していますが、特別養護老人ホームは100mほど離れており、間に空き家となった保育施設があります。また、いきいき元気館の傍には、福祉施設や新しい住宅が何軒か並んでいます。ここにも熱供給のチャンスがあるのかもしれません。

 

熱供給施設@ 高島市健康づくりセンター・いきいき元気館



高島市健康づくりセンターでは、トレーニングルームと歩行用温水プールの2施設からなります。トレーニングスペースが床面積389.25u、プールスペースが床面積659.11uあり、2006年の温水熱消費量は261,219kWhです。

トレーニング室 歩行用温水プール
トレーニング室 歩行用温水プール

熱供給施設A 特別養護老人ホーム ニューサンライズ

特別養護老人ホーム ニューサンライズは、熱供給施設から100m離れた場所にあるため、温水供給パイプが敷設されています。温水パイプの搬送では80mごとに約1℃温度が下がるとされています。
本館は2階建で2,637.34u、新館は3階建で2483.83uあり、100名が収容可能な老人ホームです。特殊機械入浴設備は8台あり、2006年度の熱使用量は105,560 kWhです。


トレーニング室 歩行用温水プール
老人ホーム 老人ホームへの温水供給パイプ
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