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仁淀川町 高知県仁淀川流域エネルギー自給システム

日程

 2008年11月26日 15:00〜17:00

内容

 高知県に淀川流域エネルギー自給システム(NEDOバイオマスエネルギー地域システム化実験事業)の視察。

報告

破砕場から製材工場が見える距離

↑破砕場から製材工場が見える距離

バイオマス流動層ガス化発電設備

↑バイオマス流動層ガス化発電設備

電気をペレット工場へ送るパイプ

↑電気をペレット工場へ送るパイプ

ペレット製造設備

↑ペレット製造設備

発電の蒸気を利用した木材乾燥機

↑発電の蒸気を利用した木材乾燥機

 高知県仁淀川町では、NEDOの実験事業として木質バイオマスを利用したエネルギー自給システムの構築に取り組んでいる。仁淀川流域において、(1)木質バイオマスの収集運搬、(2)エネルギー転換、(3)エネルギー利用をセットにした自給システムの確立を目指している。仁淀川町産業建設課木質バイオマス係の吉川毅さんに対応いただき、この自給システムの一部を見学させていただいた。

 (1)から(3)までの具体的な流れはこうである。(1)仁淀川流域の山間部で木材を集材する(2)破砕機でチップに加工し、バイオマスガス化発電に利用する(3)-1生成したエネルギーの一部でペレットプラントを稼動する。(3)-2残りのエネルギーと生産したペレットを利用する。以下で(1)〜(3)について詳しく報告する。

(1)収集運搬

 エネルギーとして利用される木材は、用材として利用できない木の根元部分、通称タンコロである。このタンコロを山から収集運搬してくるのは、主に個人経営の林家の人々である。当初は個人林家による収集量は多くないと予想していたため、架線による大規模収集や、車両で一括に収集する中規模収集なども併せて行っていたが、今では個人による収集量が増え、下りてくる材の約90%が個人林家の手によるものとなっている。そのため、今では大規模・中規模収集を停止するなどして全体量を調整しているとのことだった。個人林家による収集運搬が大きく増えた要因として、仁淀川町が高知で1、2位を争うほど個人林家が多い地域であったこと、地元NPOの存在も大きかったそうである。

(2)エネルギー転換

 山から運搬されたタンコロは、破砕機でチップに加工される。このチップを近くのガス化発電設備とペレット製造設備に搬入する。発電出力は150kW。このガス化発電設備では、ガス化炉で発生したガスを発電機に送り込む際、発生したガスを冷却せず高温のまま送り込むのが特徴である。ガスの冷却によってタールが生成されてしまうのを防げるそうである。

(3)-1エネルギー利用(ペレット製造設備)

 ガス化発電設備で生成した電気のうち60kWは、隣接するペレット製造設備にパイプで送られ、このエネルギーでプラントを稼動させる。さらに、原料となるチップを乾燥させる乾燥機では、隣のガス化発電で発生した排ガスを燃やした熱を利用している。

(3)-2エネルギー最終利用(ペレットボイラー、乾燥機)

 生産されたペレットは現在4機のペレットボイラーで消費されている(温水プール、温泉設備、福祉施設、イチゴハウス)。消費量は年間約600t。またガス化発電によって生成した電気の一部は、隣接する製材工場にも送られている。

 この設備全体の特徴は、破砕場・発電設備・ペレット製造設備・製材工場が隣接している点である。現在、年間200日程度稼動しているが、主にペレットの需要にあわせて稼動しているとのことであった。そのため、今後は病院や家庭用ペレットストーブでの利用など、仁淀川流域でのペレット消費を拡大したいそうである。もし需要が伸びて生産が追いつかなくなった場合は、同じ設備を別の場所に作る方針である。

 もとは林地残材の有効利用を検討したことから、バイオマスエネルギーとしての利用に行き着いたそうである。NEDOの事業では、ペレット消費者に対する補助金などは対象とならないため、ペレット消費者への継続的な補助があればとおっしゃっていた。

成果・感想・今後の展望

 原料の収集運搬の経路を確立している点や、ペレット製造プラントをバイオマスエネルギー(ガス化発電)で稼動させ、さらに廃熱も利用している点など、注目すべき点が多数ある事例である。森林率が高く(90%)で林家も多いという仁淀川町の利点が生かされており、やはり地域に合ったバイオマス利用の仕組みづくりが大切なのだと感じた。今後、ペレットの消費が拡大してこの地域に定着したシステムとなれば、生産から消費までが完結した、完全なエネルギー自給が実現するだろう。しかし、実現までにはまだ時間と工夫が必要で、そのためにもっと柔軟な補助制度を設けるのも一つの手段だと思う。

担当:
齊藤わか
参加者:
寺尾尚純、前田純 (敬称略)