↑間伐現場を山側から望む
↑間伐現場を谷側から望む
↑山を見つめる吉良さん
平成17年度、間伐・間伐材利用コンクールにおいて、「林業事業体による森づくり」部門で林野庁長官賞を受賞された、天竜森林組合機械班による間伐現場を見学させていただいた。この機械班で班長をされている吉良さんが考案された「天竜セミ列状間伐」方式は、高密度の作業道と高性能林業機械を組み合わせて行う作業方法を基本に、伐採列を従来の列状間伐のように並行に入れるだけではないというところが特徴である。
伐採列を並行に入れる従来の列状間伐では、伐採木は定量的な選択となり、予定される伐採列下の立木を機械的に伐っていくことになる。この方法だと、伐採予定列は優勢木も劣勢木も伐っていくので、定性的な要素を取り入れ難い林分となる。これに対し、「天竜セミ列状間伐」では、列状に伐採しながらも、それらの列を並行に入れるだけではなく、放射状に入れていくため、それらの列が林内でランダムに交差していく。
このような方法を採ることで、ランダムに入った列のどこかに伐倒木が掛かるようになり、伐採木選択の自由度が上がり、列状間伐という方法を用いながらも、定性的な間伐が可能になるという画期的な施業方法である。
このような方法を採ることで、通常の列状間伐に比べ、@効率的な列状間伐を行いながらも優勢木を残す施業が可能になるA風雪害に強い林分をつくることが可能になるB機械的な列が残る林分から、自然な印象を残した林分にすることが可能となる、などの利点
が生まれるそうである。
これからの日本の林業には、高性能林業機械の導入が叫ばれているが、ただ北欧のまねをして機械を入れるだけで日本の山林が良くなる訳ではなく、今回見学させていただいた「天竜セミ列状間伐」のように、地域ごとに事情の異なる日本の山林に合った施業方法を創意工夫し、地域ごとに独自の施業方法を確立していくことが大切であると感じさせられた。
また、今回間伐を施した林地は約1.5haほどの面積だったそうだが、その周囲の林地は所有者が異なり、間伐が遅れた状態であった。こういった隣接する林地をも同時に施業することができれば、作業道の自由度や施業コストの縮減に繋がることが想像されるし、一度に多くの林地残材を集めることができれば、バイオマス利用を進めていく場合にも有利にはたらくと思われる。そういった観点からも、隣地を団地的にまとめていく取り組みを、効率的な施業方法の工夫と並行して進めることが重要であると考えさせられる現場だった。
(廣田)
吉良さんは、山主が納得できる機械化作業を目指して、高密度の作業道開設と高性能林業機械(スイングヤーダ、ハーベスタ、フォワーダ)を導入し、急峻な地形に対応した「天竜セミ列状間伐」を考案・実施して、効率的な作業システムを確立した。この方式により、これまでに比べて2〜3割のコスト縮減を達成することができた。この「天竜セミ列状間伐」とは、作業ポイントを何箇所か決め、そこから放射状に間伐する方法で、ライン直下の立木だけでなく、横取り可能範囲が広がり劣勢木などの伐採搬出が可能となる。樹冠のバランスを見ながらポイントを変えると列が交差し、定性間伐されたような仕上がりになる。現在技術員2名で、年間素材生産量2,000・3強を達成しており、そのうち9割が間伐によるものである。
管轄する森林はほとんどが民有林であり、零細な所有形態から、作業道をつけるにも複数の所有者の了承が得られなければ、細かく急な作業道となってしまう。単に機械化と言っても山主さんが納得できること、そしてコストなどでメリットを与えなければ意味がない、と現場が要求するものを第一にしている吉良さん。物静かそうな第一印象であったが、チャレンジ精神、向上心にあふれ、日本の林業への希望のようなものを感じることができた。
(尾崎)
間伐現場を山側から見ると、非常に高密度に作業道が入っているのが分かる。作業の能率性が良さそうなのが見て取れる。
逆に谷川から同じ場所を見ると、列状間伐につきものの機械的な伐採列は見あたらず、定性的に良く手の入った林分である印象を受ける。
間伐率は40%ほどであり、次回間伐は20年後を想定されているそうである。
(廣田)
素材生産システムに絡んで、木質バイオマスの利用を推進する方策として林地残材の有効利用が考えられる。しかし、木質バイオマス市場が存在していることが絶対条件であり、残念ながら天竜の山林においても林内に放置されているのが現状であった。
架線集材では枝葉や根元材などは一箇所に集積されるのに対し、路網系集材では一箇所に集まらずに点在する結果となり、利用するにしても収集のコストを考慮する必要がある。
(尾崎)