↑イワフジ製集材機
↑架線により出された材
↑目の詰まった良材
静岡三川バイオマスツアー初日の昼から、途中参加させていただいた私が最初に訪れたのは、(株)フジイチさんという、伐採・搬出・製材・製品販売・住宅建築などの事業展開をされている会社が伐採・搬出を行っておられる現場であった。
(株)フジイチさんでは、製材用原木を市場から仕入れるのではなく、社内山林部により伐採されたものを使用しておられるそうである。伐採された立木はそのまま山で三ヶ月以上葉枯らし乾燥され、その後に製材工場敷地内で半年から一年ほど天然乾燥をし、製材される。さらにその後にも、半年から一年間の天然乾燥をされて世に出すという手の掛けようだそうである。
そのような付加価値を付けられた材は、古くからその技術が確立されている架線集材によって出材されていた。今回見学させていただいた現場は、従来よりも線長の長い、700mほどのスパンを持つ架線が張られていた。普段は、200〜300mほどの長さのものが多いそうである。また今回は、先山にラジキャリという自走式搬器を使用して集材し、その場で造材、その材を700mの架線により土場まで運ぶという2段集材方式が採られていた。この現場では、道路から700mほど離れた2haほどの伐採地から出材するのだが、そこに至るまでの林地の所有構造が小規模で分散されており、林内に作業道や土場を設け難いことから採られている集材方法だということだった。
架線集材は、現在では作業道を用いた施業や高性能林業機械による作業システムに比べてコストが高くなりがちな出材方法だと言われるが、現状の日本の林地や所有構造を考えると、その事情に合わせた有効な出材方法のひとつであると言えるようである。特に(株)フジイチさんでは、山や木を知りつくしたスタッフの方の智恵と技術、地域との良好な関係性の中から優良な材を出材する努力をされ、そのうえに葉枯らしや天然乾燥という付加価値を付けることにより、出材コストとのバランスを取られて経営されているのだと思われる。余談になるが、作業道や機械を入れることが理想的な現場があった場合は、他の伐採業者さんと仕事を融通しあったりもされていて、良好な関係も築かれているようである。
集成材やプレカット技術の台頭により、コストと歩留まりの激烈な削減競争が巻き起こっているなか、それらとは一線を画す付加価値や技術を取り入れた国産材利用の取り組みの例として、注目されると同時に期待を抱かせる、静岡三川バイオマスツアー最初の現場見学であった。
先山に集められた材が集材機によって道端まで出材される。集材機のオペレーターの方が荷降ろしも行う。オペレーターの方の右手方向が先山です。ヒノキは葉枯らしすると割れることもあるそうである。
静岡森林エネルギー研究会と薪く炭くKYOTOは同じ頃に設立し、また同時期に静岡森林エネルギー研究会はNPO法人化し、当会は関連会社ができるなど、新しい発展となった。元代表(現専務理事)の酒井さんと出会った頃を思い出し、出会いとそしていま現在、静岡と京都で共に目標に向かって歩みを進めていきたい。