相川高信(薪く炭くKYOTO)
薪炭グルメ調査の第3弾は、薪炭グルメ調査の始まりとシンクロするかのように高野に現れた、パン工房「いしがま」である。先月取材に行ったボン・ボランテの石窯を作ったのがこの店の方だと伺って、石窯の秘密を探りにやってきた。
ご自慢の窯を前に木村さんは上機嫌で、取材に行った若造二人(相川・渕上)に対していろいろお話をしてくれた。「どうだ、すごいだろう」という表情が印象的である。やはり自分で工夫・努力して道を切り開いてきた人は強い。「「いしがま」のパンを受け入れるかどうかはお客さん次第ですから」、という言葉にパン作りへの強い自信を垣間見た。
「いしがま」の大きな丸パン、¥640から。プレーン、黒ごま、くるみの3種類のみ。外はかりっと、中はウソみたいにやわらかい。切り売りはなし。あなたの舌でぜひ勝負してもらいたい。
もともとはイタリアンのシェフをしていたんです。自分の店の料理に合うパンが欲しくて自分で焼き始めました。薪で炊いたご飯は美味しいのと一緒で、パンも薪で焼いたらうまいやろうと。
最初の店は山科で始めて、その後長浜に移りました。今、山科はオフィスにして、長浜の商店街の中に一軒、そして京都は今年(03年)の7月に始めました。窯の製造・販売もしています。ここ(いしがま)よりちょっと小ぶりですが、ボン・ボランテの窯もうちが作りました。
石窯の開発に6年かかりました。最初はもっと簡単だと思ってましたけど(笑)。スペインなどヨーロッパから窯は輸入できますが、値段が高い。しかも効率が悪くて商売になりません。この窯なら一日最高320個焼けましたよ。構造?それは秘密です(笑)。
朝起きてから窯を暖めます。だいたい3時間くらいかかります。電気・ガスのオーブンだとタイマーがあるんだけど。だいたい200〜220℃で焼き上げます。火加減は勘です。おくどさんで炊いたご飯があるでしょう。あれと同じです。薪でないと、この微妙な味・風味は出せません。
薪は山台燃料という二条にある燃料問屋から仕入れています。薪は1日5束くらいで、一月にだいたい100束くらい使います。値段は1束600円、運送料込みで、電話一本で持ってきてくれます。商売だから、薪は安定供給が命。薪がなければパンが焼けないからね。昔は(山科で店を始めたころは)トラックで薪を買いにあちこち走り回っていたもんです。値段よりも安定供給ですよ。
広葉樹でないとだめです。マツでは温度が上がりすぎ、スギでは火力が足りません。薪は店内に保管しています。外は雨に濡れる怖れがあるし、(火をつけられたり)何かあったら恐いから。灰は一日でちりとり一杯くらい。陶芸する人にあげたり、店の花壇に撒いたり。煙はあんまり出ないよ。
うちは普通のパン屋とは違う感覚でやっていると思います。手間と材料費がかかっている分、ちょっと高い。材料にも当然、こだわっている。粉・水・塩・油など。秘密やけど(笑)。パンの形はこの石窯で焼くのにいい形。
うちのパンは、ご飯のようなパンです。自分の好きなように食べてほしい。カレーやシチューを付けて食べる。「あんこじゃむ」を片手に食べる。アイスクリーム&あんこじゃむに、スライスしたパンを一切れ。ガーリックトーストで。チーズやワインと。女の人でも一度に半分くらいいけちゃう。
客層はバラバラですね。学生からおばあちゃんまで。ちょっと年配の人が多いかもしれない。メニューは3種類だけですが、ここの物件はスペースがあったので、店内にカフェを併設しました。サンドイッチなどが食べられます(「彼女と来て」を繰り返す木村氏)。
さっきも言ったけど、うちは普通のパン屋とはちょっと感覚が違う。薪で焼くことの宣伝メリット?それはお客さんが判断することですから。