火出国は、木のエネルギーを利用している国。このサイトは、森林バイオマスがよくわかるサイトです。



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ものがたりから見る森林バイオマス

日本の民話や絵本、西洋の童話には、おいしい、楽しい、時にはちょっぴり怖い、木のエネルギーにまつわるエッセンスが満載です。


STORY1 ヘンゼルとグレーテル

幼少期の記憶があいまいになられているみなさんも、「お菓子の家」と言えば思い出されるのではないでしょうか、『ヘンゼルとグレーテル』。このなんともメルヘンで悲惨な子捨て物語には、たくさんの木質バイオマス利用が見てとれます。


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お父さんは「木こり」

まず、何と言っても二人のお父さんは木こり、森から木を切り出して、それを売ることを生業とされております。木は建築材や家具の材としても利用されましたが、その多くはエネルギーとして使われました。薪や木炭のかたちで、火を起こすのに用いられ、パンを焼くのにも、鉄やうつわを作るのにも木が必要でした。木を切る仕事は大変重要なものでした。

そうして一家は生計を立てていましたが、飢饉が家族を襲います。もう明日のパンもままならない、家族を待っているのは餓死による全滅…。そこでおかみさん(まま母)はお父さんに二人を森に捨てることを提案します。口減らしのための子捨て。嗚呼、血も涙もないまま母。お父さんは当初反対しますが、持ち前の気の弱さで、そのはかりごとにのってしまいます。

さて、二人の捨てられるこの森はいつもお父さんが木を切り出している薪炭林。家族でたき木を切りに行くという名目で森に入り、見事兄妹は捨てられます。つまり、木質バイオマス利用の陰で、二人は捨てられてしまうのです! パチンコに興じる親による子ども置き去り事件を彷彿とさせますね。


おかしの家には大きなかまどが・・・

その後、二人は深い森の中でお菓子のお家に迷い込みます。そのお家には、煙突のついたかまどがあります。かまどでは薪を使って、パンやお菓子、料理を作り、暖をとることもできます。ヘンゼルとグレーテルはその家の持ち主であるおばあさんが、かまどを使って作った、たくさんの料理とパンをご馳走になり、夢見心地になりました。しかしその実は、親切なおばあさんは魔女であり、二人を肥らせて食ってしまうことが目的でした。 パンやスープがあるのに、子どもを食うためなら労を惜しみません。魔女は子どもが大好きです。

魔女は、かまどにグレーテルを放り込んで、焼いて食ってしまおうとします。ところが、そこは賢いグレーテル。逆にかまどに魔女をブチ込んで、焼き殺してしまいます。おばあさんのバイオマスエネルギー利用です。アヴァンギャルドですね。

ぞっとするような魔女の金切り声の中、二人はお菓子の家に隠してあった真珠や宝石を奪取。

無事お父さんの家に帰り着くと、なぜか血も涙もないおかみさん(まま母)は死んでしまっていていて、持ち帰った宝石で貧困は万事解決。家族三人は仲良く暮らしましたとさ。卑劣なまま母抜きで。いえい、木こり、かまど、おばあさんという多彩なバイオマス利用のかたちが見られましたが、ところで、この話のラスト、なんだか都合が良過ぎませんか?本当に家族は幸せに暮らせたのでしょうか? これで良いのですか、グリム。


<こんな解釈の仕方も>

この魔女は森に追いやられたジプシーのお婆さんであり、久しぶりに出会った子供たちに、心尽くしの料理を作ってあげました。しかし、二人はおばあさんの財宝を盗み、彼女を殺害してしまいます。財宝を持ち帰ったずる賢い兄妹は、自分たちの罪を隠蔽するためにウソをつきました。
それが『ヘンゼルとグレーテル』。

なるほど。

こんなどうしようもない解釈してみたり、解釈を聞いて、初めて納得する私たちに、なんだかやり切れないものを感じながら、さようなら。



STORY2 カチカチ山

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「ウサギどん、あのカチカチいう音は何だろう」「あれはカチカチ山のカチカチ鳥が鳴いているんだよ」

まぁ、世の中には酷い話があるもので、特にこの『カチカチ山』は陰惨の極みであります。何が悲しくって、大人はこの話を昔話として子どもに語り続けたんでしょうか。



火打ち石で狸が背負った柴に点火!

幼い頃の記憶がおぼろになった皆さんも「ウサギがイタズラだぬきを懲らしめる」という概要くらいは覚えてらっしゃるんじゃないでしょうか。冒頭の会話は、タヌキどんを欺くためのウサギどんの言葉であります。タヌキどんはどうも抜けた輩で、この言葉を信じてしまうわけですが、その実、背負った柴に火打石で火をつけられている音でありました。

カチカチ、カチカチ

つまり、「ヒバナ」が散る音ですね!
今まさに「ヒバナ」が導火しているわけです!
ここにも火のある暮らしが描かれています。

「点火はこちらから」
さて、火というものは、からだをやわらかく包んでくれるような暖かさも提供してくれますが、やさしいだけではありません。タヌキどんの背中を焼きもします。タヌキどんは背中に大やけどを負います。



この話の冒頭で全ての読者に衝撃を与えてやまない「婆汁」

ねぐらで苦しんでいるところへ、再びウサギどんが現れます。「よく効く薬があるから…」と甘言を弄し、やけどに唐辛子を塗り込めます。七転八倒。当然。さらに、驚異的な回復力で起き上がれるようになったタヌキどんの前に、三度ウサギどんの登場。最後は皆さんご存知の通り、泥の船に乗せられ、溺死。かように執拗な復讐を、なぜタヌキはされなければならなかったのでしょう。

その理由こそが、この話の冒頭で全ての読者に衝撃を与えてやまない「婆汁」。
大切な種をタヌキに食われたことを知って、怒ったおじいさんがタヌキを捕らえて「狸汁」にしようと言って家に持ち帰ります。家で一人「汁」の準備していたおばあさんは、タヌキに命乞いをされ、縄をといてしまいます。おばあさんはタヌキに撲殺されます。さらに、タヌキは皮を剥ぎ、肉を鍋に入れて煮込みます。ついで、タヌキはおばあさんの皮をかぶり、おじいさんの帰りを待ちます。

「おじいさん、待ち遠しかったから、タヌキは私が絞めて、狸汁を作りましたよ」おじいさんが帰ると、「おばあさん」が言いました。「おや、そうかい。大変だったろう」おじいさんは、「おばあさん」がついでくれた「汁」を受け取りました。
「随分、肉が堅いな」とおじいさん。「何しろ歳をとっていますから」「あの狸はそんなに歳をとっていたか」「もう六十二になるそうですよ」「それならば、お前と同い歳だね」などと言いながら、おじいさんは「汁」を食べます。そうして随分食べた所で、タヌキは皮を脱いで正体を見せました。「やーい、食った食った。ジジイが婆汁食った。ババア食ったジジイ」タヌキは捨て台詞を吐いて、逃げてしまいました。とさ
むごい…

かの太宰治も「婆汁なんてのは、ひどい」と何の修辞も用いずに、端的にその感想を述べています。確かに、「勧善懲悪」です。いやね、しかし、後半の仕返しにしても、やり方が全て「だまし討ち」てのは…、どうなんでしょう??

タヌキもひどいが、ウサギもひどい。そのくせウサギはヒーロー気取り。

今、世界的に話題沸騰の「暴力の連鎖」をば語っているのでしょうか。

これが、子どもに胸を張って語れる昔話なのか?!

人が生まれて初めてふれるグロテスクホラーにしてカニバリズム復讐譚、『カチカチ山』

みなさんも、なぜこの話が語り継がれているのか、何を教えようとしているのかお子さんにお話してあげる前に煩悶してみてはいかがでしょう。
*ちなみに、最近の絵本などでは「婆汁」はさすがに登場せず、タヌキはイタズラして捕らえられ、逃げるときにおばあさんをケガさせたという程度に薄められています。しかし、そのことで余計に「ウサギどんの行為の正当性」を、お子さんに納得していただくことが非常に困難になっています。
がんばろう、大人。



STORY3 はなさかじいさん

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ものには、なんでも「5本の指」というのがあるそうです。

あそこの寿司屋は日本でも「5本の指」に入るうめぇ店だ、とか。
あの選手はパリーグでも「5本の指」に入る名投手だ、とか。
ここのみかんは和歌山でも「5本の指」に入るおいしいみかんだ、とか。
そこの歯医者は町内でも「5本の指」に入る名医だ、とか。

そんな歯医者の多い今日この頃ですが、日本の昔話にも「5本の指」というのがあるそうで、桃太郎、さるかに合戦、カチカチ山、竹取物語、そして今回ご紹介する「はなさかじいさん」が、それに当たるそうです(間違っていたらすみません)。

「さるかに」以外は、「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました」で始まる「美しい国、日本」の伝統的“高齢者礼賛スタイル”です。今や、至るところにおじいさんとおばあさんが棲み、所によってはおじいさんとおばあさんしか棲んでいない高齢社会・日本。



「枯れ木」に撒いた「灰」は、愛犬シロの形見を燃やした「灰」だった!

さて、その「はなさかじいさん」。
「ここ掘れ、ワンワン」や「枯れ木に花を咲かせましょう」等の名ゼリフとともにみなさんもご記憶でしょう。正直者のおじいさんが、枯れ木に灰を撒いたら、花がぽんっぽんっと咲き乱れるっていうおなじみのアレです。

ところで、誤解されていることが多いのが、この「灰」。意地悪じじいに殺された犬(通称、シロ)の遺灰だと思っていらっしゃいませんでしたか?かく言う僕もすっかり勘違いしておりました。正しくは、これ、シロの形見の臼を燃やした灰です。

はて、形見の臼?そんなん出てきたっけ?と思われる方も多いかと存じますので、物語を振り返ってみたいと思います。


(前略)


大判小判を掘り当てたシロと正直じいさん。それを見て、隣の意地悪じじい(以下、隣人)は嫌がるシロを無理矢理借りて、山へ行きます。シロが足を止めたので、隣人がそこを掘ったところ、出てきたのは蛇に百足にひき蛙。怒り狂った隣人はシロを撲殺。今やキレるのは、若者だけの特権ではありません。

その後、死体発見を恐れたのか、隣人はシロを山に埋めます。しかしここで隣人は奇妙な行動にでます。シロを埋めたその場所に柳の枝を突き立てたのです。憎き奴でも墓標を立て、墓を作ってやるという隣人なりの慈悲でしょうか。

それとも、正直じいさん(今や金持ち)への見せしめだったのでしょうか。畜生を大切にする宗教かなにかの関係でしょうか。

どうやら、隣人が死体発見を恐れたというのは、誤読だったようです。というのも、翌日隣人は、正直で働き者のじいさん(今や金持ち)に「シロは、俺が殺した」と告げたと言うからです。果敢な隣人。
それを聞いた正直で働き者のじいさん(今や金持ち)は泣きながら、シロの元へ向かいます。
すると、どうでしょう。
一晩しか経っていないというのに、柳は見上げるばかりの大きさに異常生長。正直で働き者でまめなじいさん(今や金持ち)は、その形見の木を切って臼をこしらえるのです。その臼で、何せまめなじいさんは、ばあさん(勿論、金持ち)と米をつきます。
すると、どうでしょう。
またも大判小判が臼から飛び出します。お金はあるところに集まるというのは真理のようです。それを見た隣人老夫婦は、その臼を借り、米をつきます。すると、今度は糞が飛び出してきます。怒り狂った隣人夫婦は、臼を燃やしてしまいます。まめな老夫婦(今や大金持ち)は、それを知って涙します。

シロの形見の臼だのに、せめて灰だけでももらってこよう———

これです。これが、かの「灰」だったのです。

あとは、みなさんご存知のごとく、老夫婦(今や大金持ち)の持ち帰った「灰」は花を咲かせます。
そこにたまたま通りかかったお殿様がそれを見て、老夫婦(今や大金持ち)に褒美を与え、性懲りもなく、それをまねた隣人夫婦は、花を咲かせることもできず、灰はお殿様にぶちかかり、処刑されました。

おしまい

超幸運夫婦が隣に住んでいたことが、彼らの人生を狂わせました。借りたものは、ちゃんと返さなければなりません。

長くなってしまいましたが、物語の概要は以上です。


バイオマス・タイム〜「灰」について

今回の物語の中の森林バイオマスは、先ほどの「灰」です。うまくまとまったものがありましたので、以下、引用させていただきます。

木炭には2〜3%の灰分(ミネラル・鉱物性栄養素)が含まれている。これらは原木が生長をつづけるために土のなかから吸い上げた養分で、ナラ材のばあい、そのおもなものはカルシウム(約40%)とカリウム(約20%)である。


(中略)


これらの成分は原木(炭材)から木炭にやかれる(炭化される)ことによって、約3倍ぐらいに濃縮され、原木のときと違って水に溶けやすいかたちになることも木炭の灰分の大きな特徴のひとつである。


(中略)


木炭の灰分は、果樹や農作物が生長するのに必要なミネラル(鉱物性栄養素)を補給するのに有効で、とくに畑作やハウス栽培で、同じ品種の作物を連作するばあいに、どうしても鉄、マンガンなど、必要な微量の無機成分が不足しがちになるため、適量の木炭を土に入れてやることによって、土のなかに残留している有害物質は吸着され、不足している微量成分を補給するので、連作障害を防ぐはたらきをすることになる。茶畑やブドウなどの果樹園では、木炭の灰分の効果で収穫量が増えるばかりでなく、味もよくなる例が多い。
枯れ木に灰をまいて花を咲かせたのは『花咲爺』の正直じいさんだったが、灰は樹木にとっても貴重な養分(ミネラル)で、正しく使うことによって土が改良され、木が元気になり、よく生長するということを教えている。ただ、使い方を誤ると、効果がないばかりか、木を枯らしてしまうという意地悪じいさんの失敗例にも見られるように、とくに使用量には注意していただきたい。木炭も灰もアルカリ性で、農地で使うときは一反当たり三百キロが目安で、使いすぎると、土がアルカリ性になり逆効果となる。


なるほど、勉強になります。いろんな読みがあるものですね。

しかし、今回改めて読み返してみて、こう思いました。

いいよなぁ、おじいさん、超ラッキー。

しかし、当たらんかなぁ、宝くじ…当たるんなら、正直者で、まめで、働き者に、なるからさぁ

あさまし、あさまし。