截金職人 齋藤一陽さん
截金(きりかね)という伝統工芸があります。
仏像や仏画、それにお経や絵巻物がきらきら光っているのは、実は金箔を貼り付けてあるからなのです。
截金とはその装飾をする技術、つまり、金箔やプラチナの箔を貼り合わせ、細かく切ったものを貼り付けて模様をつける技術のことです。
この技術は中国から伝わり、日本では平安時代に発展したそうです。文化財の保護などのために細々とその技術が伝承されていて、現在ではこの技術を工芸品に応用する動きもあるそうです。
齋藤さんは学生時代にチベット密教に興味を持たれ、インドを旅したことをきっかけに伝統工芸にあこがれるようになったとか。
一度は普通の職に就いたものの、伝統工芸への夢があきらめきれず、滋賀県にある仏画と仏像を手がける工房の試験を受験、その課題が截金でした。
手先の器用な齋藤さんは、この試験にクリアすることができ、截金の道を歩むこととなりました。
現在は、京都市東山区にある自宅マンションを工房に、フリーで様々なお仕事をされています。
森林バイオマスと截金の接点は、截金の最初の工程である「薄い金箔を2~8枚貼り合わせる作業《にあります。
ここで火鉢を使うのです。
炭は伝統的に備長炭が使われており、その理由は、金箔を貼り合わせるためには高温が必要だからだそうです。
それも、急に高温にするのではなく徐々に温度が上昇する工程が必要とか。
初めアイロンを使っていたそうですが、伝統的な技法を大切にする師匠と出会い、炭火を使うようになったとのことです。
「炭火を使ってみたところ、炭火とアイロンではでき上がった金箔の風合いがまったく違うため、炭火を使うことがやめられなくなりました。
炭火で貼り合わせた時にできるちりめんのような美しい皺は、金箔を貼り付けた布や紙が湿気を含んで、伸び縮みしたときにもそのひずみを吸収する役目があります。曲線を描く時にもこの皺は欠かせません《と、齋藤さん。
皺を金箔全体に均一にするためには、節がなくまっすぐで目の詰まった備長炭を選んで使用します。
こうして炭を使い出した齋藤さんは、冬に暖を取るためにも火鉢を使うようになりました。
截金という技術の存在は、金箔を切って貼るというシンプルな技術です。
使う道具は、金箔・火鉢・竹の箸・竹のナイフ・小鹿の皮を張った台・膠(にかわ)・布海苔(ふのり)それに一般的な絵筆です。
截金の楽しさは、集中し、新しい表現を開拓することにあるとか。
齋藤さんの今の願いは、もっと多くの人に普通に截金を楽しんでもらいたいことです。
齋藤さんはこれから一般の人も参加できるようなワークショップを開くことを検討中です。伝統のある技術と新しい表現ができる芸術を、あなたも試してみませんか?最新情報は、齋藤一陽さんのブログをご覧ください。
齋藤一陽さんのブログ「一陽来福」http://blog.goo.ne.jp/ichiyo_raihku